ウィリアムズ症候群
概念・定義
特徴的な妖精様顔貌、精神発達遅滞、特異な性格、大動脈弁上狭窄および末梢性肺動脈狭窄を主徴とする心血管病変、乳児期の高カルシウム血症などを有する隣接遺伝子症候群。症状の進行を認める疾患であり,加齢によりとくに精神神経面の問題,高血圧が顕著になる。これらの症状に対し、生涯的に医療的、社会的介入が必要。
症状
子宮内発育遅延を伴う成長障害、精神発達遅滞(認知能より表出能に長け、特に視覚性認知障害あり、多動・行動異常あり)、妖精様顔貌: elfin face(太い内側眉毛、眼間狭小、内眼角贅皮、腫れぼったい眼瞼、星状虹彩、鞍鼻、上向き鼻孔、長い人中、下口唇が垂れ下がった厚い口唇、開いた口など)、特異な性格(社交的でおしゃべり、お人好し、出しゃばり)、外反母趾、爪低形成、歯牙低形成・欠損、低い声を認める。 先天性心疾患(大動脈弁上狭窄、末梢性肺動脈狭窄など)、乳児期高カルシウム血症、腎動脈狭窄、冠動脈狭窄、泌尿器疾患(石灰化腎、尿路結石、低形成腎、膀胱憩室、膀胱尿管逆流など)を合併する。成人期は、社会的自立が困難で、高血圧、関節可動制限、尿路感染症、消化器疾患(肥満、便秘、憩室症、胆石など)が問題となる。突然死や麻酔関連死が報告されている。
治療
乳児期には,嘔吐,便秘,哺乳不良,コリックによる体重増加不良を認め,筋緊張低下,物音に過敏で育てにくい場合が多い.高カルシウム血症を認めることがあり,通常は幼児期までに改善するが,Vit.D 代謝異常が残ることが多い.中耳炎を繰り返す.約50%に鼠径ヘルニアを認め,手術を必要とする.
幼児期には,厚い唇,長い人中,大きな口,鼻根部平坦,腫れぼったい上まぶた,頬が丸い特徴的「妖精様」顔貌,過剰に陽気で多弁な「カクテルパーティー様」性格,嗄声に加え精神発達遅滞が顕著となる.1人歩きは平均で21ヵ月,発語が21.6ヵ月と遅れを認める.SVAS(64%),PPS(24%),VSD(12%)などの心疾患の評価はほとんど幼児期におこなわれ,18%で手術が必要.SVAS は進行性であるが,PPSは改善することが多い.
学童期には,ほとんどの患児が学業において問題を抱え,IQは平均56である.視空間認知障害,特異的認識パターンを認める.注意欠陥障害を84%で認める.一方,言語発達,記憶力は良好.豊かな音楽感性をもつ.微細運動を必要とする活動が苦手.共動性斜視や遠視等視覚障害および音への過敏性なども目立つ.不正咬合,エナメル形成不全等がみられる.夜尿,便秘が多い.頻尿もすべての年齢層で認められる.関節可動制限が進行し,つま先歩行,脊椎前彎がみられる.
成人期には,顔貌は幼児期の丸い顔から細長い輪郭,長い頸へと変化.平均IQ58.5で,重症から境界例までの精神発達遅滞を認める.大部分は精神発達の問題により社会適応できない.先天性心疾患に加え高血圧(22歳以上の60%)が認められる.脳血管障害発作にも注意が必要.慢性便秘,胆石,結腸憩室などの消化器症状や肥満がみられ,尿路感染症を繰り返す.進行性関節可動制限(90%),脊椎前彎,側彎が認められる.身長は,乳児から幼児期は低いがキャッチアップし,平均の最終身長は-2SD程度となる.骨年齢は標準的.
全年齢を通じてビタミンDを含む総合ビタミン剤の投与には注意が必要である.また,麻酔中の突然死の報告があり,心臓カテーテル検査や外科手術に際しては、注意を要する.乳児期から聴覚,視覚の試験を 随時行い,言語療法等のサポートを行う.不明熱の際には尿路感染症の可能性が常にある.
抜粋元:ウィリアムズ(Williams)症候群 概要 - 小児慢性特定疾病情報センター (shouman.jp)
関連団体
ウィリアムズ症候群 四国家族の会 (amebaownd.com)