腎尿管結石
概念・定義
尿路に結石が存在する状態を尿路結石症といい,腎~尿管内に生じる上部尿路結石と,膀胱~尿道に生じる下部尿路結石とに区別する。小児の尿路結石は成人と同様に上部尿路が多いが,頻度は低く全尿路結石患者の1%の発症率である(1)。性差はみられず,カルシウム(Ca)結石や感染結石の頻度が高い。また,代謝異常や尿路奇形を有することが多いのも特徴である。
症状
肉眼的血尿を主訴とする場合が最も多く半数近くを占める。次いで多いのは側腹部痛,下腹部痛(約1/3 の症例)であるが,小児の場合は成人と比較して疝痛発作を訴えることは少ない。通常,疝痛は陰嚢や陰唇へと前面に放散する。
腎石灰化症,腎孟・腎杯結石の場合は,血尿を生じても通常痛みは生じない。しかし,結石が尿管に移動した場合その部位の痛みに加えて尿流停滞による腎孟内圧の急激な上昇から側腹部痛を生じる。乳幼児では,不機嫌,哺乳力低下,悪心・嘔吐といった不定愁訴であることが多く注意を要する。また,発熱を伴う場合は,尿路感染症を併発している可能性があり抗菌薬による治療が必要である。なお,無症状でX 線や自然排石により偶然発見される尿路結石もある。
治療
結石の大きさが,成人の場合は5mm 以下,小児の場合は4mm 以下の場合は自然排石が期待できる。しかし,自然排石せず内科的治療に反応しない場合は外科的治療の適応となる。
1. 内科的治療
薬物療法としては,痛みに対して対症的に鎮けい薬,鎮痛薬などを用いる。また,原疾患や結石成分により,以下のような薬物療法を行う。
尿細管性アシドーシス,シュウ酸カルシウム結石,リン酸カルシウム結石,尿酸結石,シスチン結石には,クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物,重曹(炭酸水素ナトリウム)による尿アルカリ化をはかる。
シュウ酸カルシウム結石に対して,カルシウムの腸管からの吸収を抑制するマグネシウム製剤(酸化マグネシウム)を投与する。
シスチン尿症に対して,シスチンを易溶性のシステインに変化させるアスコルビン酸やチオプロニン,D-ペニシラミン,カプトプリルなどを投与する。
2. 外科的治療
1) 体外衝撃波砕石(破砕)術(extracorporenal shock wave lithotripsy:ESWL)は成人と同様に第一選択となる。1 歳未満の報告も散見される。年少児では,全身麻酔もしくは呼吸管理下に鎮痛薬の投与にて施行する。小児では,腎と肺が接近しているので肺出血をきたす危険があり肺野の防護処理を行うことが重要である。
2) 経尿道的尿管結石砕石術(trans urethral ureterolithotripsy: TUL)
骨盤内尿管,尿管下部の結石では,ESWL による砕石が困難であり本法が適応となる。
3) 経皮的腎結石砕石(破砕)術(percutaneous nephrolithotripsy: PNL)
2cm を超えるような大きな結石や珊瑚状結石などで適応となる。ESWLとの併用療法が一般的である。TUL も加えた治療法が選択される場合もある。
4) 開放手術(および腹腔鏡下腎孟切石術)
上記治療に抵抗する症例で選択される。最近,年長児における腹腔鏡下腎孟切石術(robot-associated laparoscopic pyelolithotomy)を推奨している報告も見受けられる。
再発予防のために,水分摂取を促し,尿量を増加させることは結石の成分を問わず重要である。シュウ酸結石や尿酸結石の予防には,これらの成分を多く含む食品の制限などの食事療法が有用である。