脳室内出血
脳室内出血とは
脳室内出血(intraventricular hemorrhage:IVH)は、脳室周囲または脈絡叢の血管破綻によって生じる脳室内の血液貯留で、早産児の重篤な影響を与える病気で後遺症の原因となる重大な合併症の一つです。
とくに30週未満の極低出生体重児に多く、出生週数が早いほど発症しやすくなります。
脳室内出血(IVH)が早産児に多い理由
脳室内出血(IVH)は、出生直後の未熟性の強い時に発症が多い理由は、早産児の脳自体が脳室内出血しやすい構造であるうえに、呼吸も循環が未熟で不安定な状態にあるためです。
早産児の脳室内出血(IVH)のほとんどが脳室の上衣下胚層という場所に起こります。
上衣下胚層は、未熟脳だけに特有の組織で、在胎26週で最大、在胎34週ごろに消退するといわれています。
上衣下胚層の血管は薄く破綻しやすい、上衣下胚層に血液を送っている動脈は虚血になりなすい、上衣下胚層を流れている静脈は血液が滞りやすい構造をしているなどの特徴があり、虚血でもろくなっている組織にうっ血すると血管が破綻し出血がおこってしまいます。
脳室内出血(IVH)の早産児の発生頻度
脳室内出血(IVH)は、在胎週34週以下の早産児に多く、出生体重が低いほど、また在胎期間が短いほど発症頻度が高く重症となります。
早産児における出血発症時期は、生後24時間以内が50%、日齢2日が25%、日齢3日が15%と生後3日以内に多くみられます。
ある調査によると脳室内出血(IVH)は低出生体重児の35~45%に認められ、極低出生体重児(出生体重が1500g未満で出生)の脳室内出血の発生率は13%、3度以上の重症脳室内出血の発生率は7%という報告があります。
脳室内出血(IVH)の症状
脳室内出血(IVH)を疑う症状としては、出血が軽度で出血量が少ない場合には無症状のこともありますが、出血量が多かったり、血腫によって脳が圧迫されたりすると徐脈や無呼吸の増加、反射の増加、元気がなくなる、皮膚色が不良となる、母乳やミルクの吸い方が弱くなる、痙攣、異常な姿勢、大泉門の膨隆などがみられます。
とくに生後72時間以内にみられる場合は注意が必要です。
脳室内出血(IVH)の診断
脳室内出血(IVH)を診断には、脳エコーが用いられ、重症度は出血がどれくらいの範囲に及んでいるかにより1度から4度に分類されます。
1度:出血は上衣下胚層に限局(脳室内には出血していない)。
2度:出血は脳室内にも及ぶが脳室拡大はない。
3度:出血は脳室内に及び、脳室が拡大している。
4度:脳室拡大があり、脳実質にも出血が及ぶ。
脳室内出血(IVH)の治療
脳室内出血(IVH)は発症すると有効な治療法はないので、予防が極めて重要であるといわれています。
脳室内出血(IVH)の予防のために治療法としては、出生前に母体ステロイド投与、出生後には未熟児動脈管開存症に対するインドメタンシン投与です。
早産児が出生して胎外の環境に適応するまでの期間、呼吸は循環をできるだけ安定させ、刺激を与えないことが重要です。
脳室内出血により水頭症となった場合には、反復腰椎穿刺や髄液産生を抑制する薬剤の投与などが行われますが、これらの治療の効果が得られない場合はシャント手術など脳外科的処置がおこなわれます。
脳室内出血(IVH)の後遺症
脳室内出血(IVH)の後遺症は、脳室内出血の分類により1度から4度に分類されます。
1度:神経学的後遺症は5~10%
2度:神経学的後遺症は15%
3度:神経学的後遺症は35%
4度:神経学的後遺症は50~100%