「私もう赤ちゃんじゃない!」と言い始めるのは3歳くらい
精神的な発達を考える時、3歳頃に大きな転換点が存在します。
どういうことかというと、「母と自分は別の存在だ」と認識できるようになるのが3歳頃ということです。
生まれる以前、お母さんのお腹の中で育った赤ちゃんにとってお母さんは自分の一部です。
自分とお母さんは分離することのできない全く同一の存在として感じられています。
お腹の外に出てきた瞬間から肉体的には別の存在になってしまいますが、精神的には同一の存在のままです。
この感覚を母子一体感と言います。
母子一体感が最大値の状態の赤ちゃんにとってお母さんは自分の分身です。
自分と他人、という感覚がなく、100%お母さんに依存しています。
だから姿が見えないと、とても不安になって泣いてしまうのですね。
ですが、成長とともに「お母さんと自分は違う存在だ」と理解するようになります。これが理解できるようになるのがだいたい3歳頃、第一次反抗期の頃です。
発達の第一段階 第一次反抗期
いわゆる「イヤイヤ期」のことです。
第一次反抗期の定義には諸説ありますが、一般的には2歳から3歳頃から始まり、小学校入学前の5歳まで続くとされています。
赤ちゃんの自我意識というものは曖昧です。
快不快の感覚や生理的欲求はあるものの、「自分」という意識は希薄な状態です。
それが、 2歳くらいから「自分で物事を決めたい」という気持ちが芽生えます。
つまり、「自分」という自我が生まれてくるのが2歳から3歳頃ということです。
「イヤイヤ」という反抗は、「お母さん」と「自分」を分離し自我を確立しようとする過程です。
子どもの理解の範疇を超えて、自制しきれない出来事に対する反応でもあります。
子どもが突然反抗的な態度を示したり、何にでも「イヤ!」と言うようになったら、第一次反抗期の兆候かもしれません。
言葉の表出が難しい子の場合、「イヤ」という言葉は出てこないかもしれません。
しかしよくよく観察してみると、なんとなくいつもと違って反抗的な態度だったり、いつもと
一緒のはずなのに機嫌が悪そうなだったりすることがありませんか?
いつもは好きなおもちゃを急にポイっと投げたり、笑顔で話しかけたのにプイっと顔をそらしたり……
もしかしたら、それがその子なりのイヤイヤ期なのかもしれません。
ということで、自我の芽生えとともに第一次反抗期を迎える3歳頃というのが、
精神的な発達の最初のターニングポイントだということです。
発達に遅れのある子の場合、第一次反抗期が実際に3歳頃にやってくるとは限りません。
一緒に過ごしているうちに、「あれ?なんだか反抗的な態度」「いつもは喜ぶのに今日はなんで嫌がるの!」みたいなタイミングがあれば、実年齢がいくつであれ、精神的には3歳程度の発達がある、と考えられるかもしれません。
具体的にはどんな絵本がいいんだろう?
さて、ということで生まれてから2-3歳頃、第一次反抗期を迎える前、まだ母子一体感の真っただ中にある子にお勧めの絵本を見ていきましょう。
ポイント①:優しい言葉を使っている
優しい言葉の語感というものは、言葉の意味が分からなくてもても伝わるものです。
柔らかい表現のものを選ぶのがgoodです。
『いないいないばあ』 神谷みよ子 童心社
「くまちゃん」「にゃあにゃ」など柔らかい表現を使っています。
いないいないばあという遊びにもなっています。
ポイント②:言葉にリズムとイメージがある
何度も同じ言葉や表現を使う絵本も、小さい子に向いている絵本です。
同じ言葉を繰り返すことでリズムが生まれます。
また、再現性があることで遊びにもつながります。
『さよならさんかく』 わかやまけん こぐま社
色と形からの連想を繰り返す構成になっています。
連想ゲームのような認識の遊びにもなります。
言葉からイメージをつくるという点で、オノマトペを使った絵本もお勧めです。
『もこ もこもこ』 谷川俊太郎 元永定正 文研出版
ポイント③:動物や食べ物
食べ物や動物などは、見て聞いて、体験できる身近なものです。
体験をベースにすることができるので、小さい子にも理解しやすいです。
『なにを食べてきたの』 岸田衿子 長野博一 佼成出版社
ぶたと果物という身近な題材を取り扱っています
『動物の親子』 薮内正幸 福音館書店
文章はなく、タイトル通り
動物の親子が描かれたまさに絵本です。
親と一緒にいる子ども、という
見ている子どもにとっても安心感に
つながる作品です。
絵本を含め、五感を刺激することは体験の拡大につながります。
これが具体的な言語の増加につながり、自分を理解し理解されることにもつながります。
発達の遅れている子は、一般的な子に比べて言葉が出るのが遅かったり、話すこと自体が難しかったりします。
そんな子たちが自分の欲求を表出できるようになるには、一般的な子よりもさらに多くの刺激や体験が必要でしょう。
たくさん絵本を読んで、たくさんの刺激を与えてあげましょう!
※ 当記事は「絵本児童文学研究センター」の基礎講座を参考にして構成しております。
絵本・児童文学研究センター(通信講座・通信教育/名誉会長 河合隼雄 氏) (ehon-ej.com)