女子の憧れ『セーラームーン』! 男子は?『ウルトラマン』?
2-3歳頃から始まる第一次反抗期ですが、3-4歳頃には反抗が顕著になり、4-5歳になると徐々に落ち着いてきます。
というのも、母子分離がだんだんと進み「自分と他人は違う」ということが理解できるようになってくるからです。
一方、完全に母子一体感が抜けたわけではないので、心理的には不安な状態です。
また、「他人」を意識することで自分以外の「他人」に対しても興味ができてきます。
こうした心理的状態から、子どもの中には様々なイメージが広がり、心理的不安を空想や物語で埋めようとします。
では、子どもの中に広がるイメージ、空想の世界とはどんなものでしょうか?
わかりやすいものとしては、擬人化です。
小さな子が、まるで自分の分身かのようにクマのぬいぐるみを大事に持ち歩き、友達のように話しかけて一緒におままごとをすることがあるでしょう? あれです。
また、英雄願望、変身願望、分身願望などといったものも見られます。
今の子でいうと、『仮面ライダー』や『プリキュア』にドハマりする時期ってことです。
あなたにも覚えがあるでしょう?
ちなみに筆者は『セーラームーン』が大好きでした。
発達の状態が周囲からはわかりにくい子だと、こういった変化はわかりにくいかもしれません。
そこで、ちょっとテレビの力を借りてみましょう。
前提としては、反抗期らしきものが認められる、あるいは過去に認められた子です。
その子に『プリキュア』でも『仮面ライダー』でも、変身シーンのある番組を見せてみてください。
どうでしょう?
興味を持っているようにみえますか?
変身シーンで目を輝かせていませんか?
あるいは『アンパンマン』
「あんパーンチ」に喜びますか?
それを真似しようとする様子がありませんか?
言葉の表出のない子の、こうした変化を見つけるのは難しいかもしれません。
ですが、よく見てみてください。思い当たるような変化はありませんか?
もしそうだとしたら、その子は4-5歳程度の発達があると考えられるかもしれません。
具体的にはどんな絵本がいいんだろう?
反抗期の終わりごろになると、子どもは「他人と自分」の違いがだんだんと理解できるようになります。
では、「他人」とは何でしょうか?
「他人」にも色々いますよね。
「親」「兄弟姉妹」「祖父母」「友達」「まったく知らない人」
それぞれ違った立場の「他人」を理解するうえで、物語が役立ってくれます。
また、自分の中での空想や物語が広がり、探求心が強まる時期でもあります。
小さな頃に比べると、色々なジャンルの絵本が楽しめるようになっているはずです。
ポイント①:非日常世界
『おじさんのかさ』 佐野洋子 講談社
普段は傘が大事で大事で、雨でも傘を使えないおじさん。
そんなおじさんが傘を使ってみたら……?
ちょっとした探求心から非日常的な出来事が起こり、それが感情の解放を促します。
最後は家に帰ってきてまた日常に戻るけれど、前とはちょっと違っている。
この物語の構造は、「行きて帰る」というファンタジー文学の基本構造になっています。
複雑なファンタジーはまだ難しいでしょうが、ファンタジーの導入として4-5歳にはちょうどよい絵本です。
ポイント②:擬人化
『こんとあき』 林明子 福音館書店
生まれた時から一緒のきつねのぬいぐるみ「こん」は「あき」の大事な友達です。
「こん」のほころびてしまった腕を治してもらうために、一緒におばあちゃんの家に向かいます。
現実のぬいぐるみはしゃべったり動いたりしません。
ですが、子どもにとっては大事な友達であり、分身でもあります。
こんとあきの関係性は、子どもにもきっと共感できるはずです。
ポイント③:兄弟 姉妹
『あさえとちいさいいもうと』 筒井頼子 林明子 福音館書店
一緒に道路で遊んでいたのに、いもうとがいなくなっちゃった!
おねえちゃんの目線で描かれる物語です。
おねえちゃんとしての自覚や責任感、いもうとがいなくなったことへの焦りや不安、みつかったときの安堵など、多くの場面で色々な感情に共感できることでしょう。
ポイント④:ナンセンス
『ぼちぼちいこか』 マイク・セイラー 偕成社
ナンセンスとは、「意味をなさないこと」によって成立するユーモアのことです。
有名なナンセンス文学としてはルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』があります。
4-5歳頃になればユーモアをある程度理解できるようになります。
また、言葉遊びができるようになるので、ナンセンスの面白さも理解できるでしょう。
ポイント⑤:反抗
『かいじゅうたちのいるところ』 モーリス・センダック 冨山房
ママに対して「食べちゃうぞ」と言ってみたり、罰で夕食を抜かれたり……。
こうした「嫌な感じ」や「反抗的な気持ち」になっても、子どもは空想を膨らませることでそれを忘れることができます。
4-5歳は他人との関係性に興味を持つと同時に、空想やイメージが大きく広がる時期です。
言葉の表出のない子であっても、様々なイメージを持っているのは同じです。
ですが言葉では伝えてくれないので、どんなイメージを持っているのか、周囲にはわかりにくいですよね。
そんなときは、イメージが広がる絵本を片っ端から見せてあげましょう!
「どれが好き?」「こんなことやってみたい?」「これは何だろう?」
色々な声掛けをしながら、反応を見てみましょう。
やっている内に、「これが好きみたい。こんなことを考えているのかな?」と思えるようになるかもしれません!
※ 当記事は「絵本児童文学研究センター」の基礎講座を参考にして構成しております。
絵本・児童文学研究センター(通信講座・通信教育/名誉会長 河合隼雄 氏) (ehon-ej.com)