D-6 絵本を選ぼう! 5-6歳向け

 

やりたくなくても「やらなきゃいけない」ってあるでしょ?

 

 

 5-6歳になると、もう年長さんの年頃ですね。

 

一般的な発達をする子であれば、第一次反抗期を終え、もうすぐ小学生という意識も芽生え、もうすっかりお兄さん、お姉さんになっている頃でしょう。

 

 

 

さて、この年ごろにもなれば、「自分とお母さんは一緒」という感覚は薄れ、「自分」という自我が芽生えます。

 

「自我」を持つということは、「自分」という意識があるということ。つまり、「意識」ができるということです。

それと同時に「無意識」ができるということでもあります。

また、この変化とともに今までは希薄であった「時間感覚」が獲得されるようになります。

 

 

 

ですが、まだまだ自分で考えて物事を見定められるほど強固な「自我」を持っているわけではありません。

 

この頃の「自我」は周囲の大人の影響を強く受けることになります。

 

 大人から「こうしなければならない」と言われれば、自分でもそうだと思い込んでしまいます。

 ですが一方で、「本当はこんなことしたくない」という自分の本当の価値観は無意識下に抑え込まれてしまいます。

 「本音」と「建て前」ができるということです。

 

 

 「本音」と「建て前」の間には歪みが生じます。

 

 この歪みと折り合いをつけていくのが、この年頃以降の精神的な課題の一つになります。

 

 

 

 

D-6 絵本を選ぼう! 5-6歳向け

 

 

 

 発達のゆっくりな子や言葉の表出のない子の場合はどうでしょうか?

 

 

 

彼ら彼女らの「自我」がどれほどのものなのか、観察から察するのは容易ではありません。

 

 なにしろ、「本音」の部分は外からみてわかるものではないので、「本音」があるのかどうか、観察だけでわかるものではないでしょう。

 

 

 

 

 

 

 ですから、「建て前」の部分を探してみてはどうでしょうか?

「こうしなくちゃいけない」と思っている様子を探してみてください。

 

 

D-6 絵本を選ぼう! 5-6歳向け

 

 

 こんな風に思っているように見えませんか?

 

「ちょっと大きくなってお兄さんになったからか、最近歯磨きもきちんとやるようになったんだよねー」

 なんて思うこと、なかったですか?

 

 もしかしたらそれは、「建て前」ができて「本音」が隠れているサインかも?

 

 

 

 

 

 

 

具体的にはどんな絵本がいいんだろう?

 

 

 

5-6歳程度の発達のある子であれば、興味を持ったものに対して観察する力がついてきます。

 

観察して、そこから何かしらを受け取って心を育てます。それがさらに観察力を養い、一段向上した観察力がさらに心を育てます。

 

こうした循環によって、五感や感じる力を育てていきます。

 

 

D-6 絵本を選ぼう! 5-6歳向け

 

 

 

 

 

 

 ポイント①:対人関係

 

 

D-6 絵本を選ぼう! 5-6歳向け

『おしいれのぼうけん』 古田足日 童心社

 

 

 

対人関係に関しての絵本は反抗期が始まったころからお勧めするものではありますが、友人との関係となると、少し大きくなった5-6歳頃からがちょうどよいでしょう。

 

お仕置きでおしいれの中に閉じ込めるという行為が現代では虐待だのなんだのといわれてしまいますが、想像するのは勝手です。

親や先生という依存対象から離れ子どもだけで冒険するという経験は、医ケア児の場合はなかなかできないことでしょう。そういう経験こそ、絵本を通して想像できるとよいのではないでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 ポイント②:自然

 

 

 

D-6 絵本を選ぼう! 5-6歳向け

『はなをくんくん』 ルース・クラウス 福音館書店

 

 

 

 冬眠から覚めた動物たちが春の気配にはなをくんくんさせて喜んでいます。

 

 時間の感覚は5-6歳頃には獲得されます。

 このころになれば四季が巡り、春を喜ぶ感覚も理解できるでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 ポイント③:個性

 

 

 

D-6 絵本を選ぼう! 5-6歳向け

『じぶんだけのいろ』 レオ・レオニ 好学社

 

 

 

それぞれの動物にはそれぞれの色がある。じゃあ、カメレオンは?

自分と他人を区別するための自分の色、それを持てないカメレオンが最後には自分の居場所を見つけます。

 

「自分」と「他人」を理解できる5-6歳頃であれば、自分と他人の同じところや違うところに安心したり不安になったり、自分の個性について気が付き始めているでしょう。

この絵本は、どんな色であっても自分が自分であることに変わりはない、というメッセージにもなるかと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 医ケア児の発達の仕方は、母子手帳に書いてあるような一般的なものからはずれることが多いですよね。

 

 母子手帳には1歳で意味のある言葉が出るとか、2歳になれば二語文を話すとか書いてありますが、「うちの子、一言もしゃべらないし……」なんてこともあるでしょう。

 

 いつか話せるようになるのか?

 それはわかりません。一生言葉を発することのない子もいます。

 

 

 ですが、話せないからといって言葉がわからないわけではありません。

 言葉が出ないだけで、何も考えていないわけでもありません。

 

 文章の優しさや、親の声など、言葉以外の部分からだって刺激を受けています。

 

 

 絵本を一緒に読むことは、子どもにとって大事な親との時間です。

 そして絵本は想像をのびのびと伸ばしていくツールでもあります。

 体は不自由だったとしても、想像力に制限はありません。

 

 絵本を楽しむことに制限はありません。

 ぜひたくさん読んであげましょう!

 

 

 

 

 

※ 当記事は「絵本児童文学研究センター」の基礎講座を参考にして構成しております。

絵本・児童文学研究センター(通信講座・通信教育/名誉会長 河合隼雄 氏) (ehon-ej.com)

 

 

 

 

 

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