たかが痰 されど痰
人工呼吸器を使用している子の場合、痰の処理にはかなり気を使いますよね。
痰が溜まってくるとゲホゲホしたり、アラームが鳴ったり。
「やばい!吸引しなきゃ!」ってなりますよね?
ですが、吸引で吸い取ることができる痰は本人がゲホゲホと吐き出せるものに限られます。
ゲホゲホできるってことがとても大事だということです。
ですが、医療的ケアの必要な子の場合、そもそも全身の力が弱く、痰を出す力が弱い場合もあります。
また、背骨が曲がってしまっていたり(側弯)、胸の形が歪んでしまっていたり(胸郭変形)、呼吸に不利な条件を持っている子もいます。
そもそも、それが人工呼吸器を必要とする理由でもあるため、人工呼吸器が必要な子は痰を出す力が弱い可能性が高いです。
人工呼吸器を使っていなかったとしても、成長がゆっくりな子は筋肉の発達もゆっくりであるため、痰を吐き出す力が弱かったり、側弯、胸郭変形が見られたりすることも稀ではありません。
「腹臥位療法」
簡単に言うと、うつ伏せにして背中をマッサージして痰を出しやすくする方法のことです。
本来、腹臥位療法は、肺の背中側が障害された際の治療です。
うつ伏せにすることで障害された肺が膨らみやすくなるため、呼吸状態の改善が見込まれます。
ところで人工呼吸器を使用している子は、体位変換をするとはいえど、基本的には仰向けで過ごしますよね。
すると、出し切れなかった痰はどの辺に溜まるのかというと、肺の背中側に溜まりやすくなります。
これが本格的に詰まると肺炎や無気肺になってしまいます。
つまり、肺の中でも背中側が肺炎や無気肺になりやすい場所ということです。
ということで、腹臥位療法は肺炎、無気肺の予防にとっても効果的です。
実際にやってみよう!
〈用手的呼吸器介助〉
手を使って呼吸を介助する方法のことですが、これはプロの指導下でのみ行ってください。
指導のないまま不適切な手技を行うと合併症(肋骨骨折、低酸素血症、疼痛、循環動態異常など)を起こすこともあります。
用手的呼吸器介助の概要は、患者の胸部に手を当てて、呼吸に合わせて圧迫・解除を繰り返します。
患者の呼気に合わせて胸郭の運動を介助し、換気の改善、呼吸仕事量や呼吸困難の軽減を図ります。
注意点はいくつかあるものの、腹臥位療法により、背側肺に溜まりがちな血流が肺全体に行き渡り、潰されていた肺がしっかり膨らむ効果が期待されます。
また、体位が変わることで奥の細い気管支に溜まっている痰を排出する効果もあります。
「排痰補助装置」
痰を出すリハビリ方法として、排痰補助装置(カフアシスト)を使うという方法もあります。
カフアシスト | 医療的ケア児との暮らしに役立つ情報をワンストップで紹介するサイト|医ケアkidsナビ (spesapo-navi.jp)
気道に圧をかけて肺を膨らませ、息を吐き出す際に陰圧にすることで咳の介助(代用)をする機械です。
これを使うことで、自力で痰を吐き出す補助をすることができます。
医療保険上、人工呼吸器を使用している人のみが対象ですが、排痰のサポート、排痰リハビリに有用とされています。
当サイト内、『医療的ケア』の項目内に「排痰補助装置の使い方」を掲載しておりますので、そちらもご参考ください。
医療的ケア|医ケアkidsナビ (spesapo-navi.jp)
痰を出すのはとっても大事です!
ぜひ自宅でトライしてみてください!
記事協力: 菅原慎平 先生
訪問看護ステーション所属の理学療法士として障害児リハビリテーションに従事。
現在は独立し、【整体院 札佳】を開院中。
※【整体院 札佳】では小児の個別訪問リハビリは行っておりません。
介護等のために外出が難しいご家族向けの訪問整体は随時受け付けております。