I-7 インタビュー(ノックオンザドア株式会社)

 

このインタビュー企画の目的は、民間企業が提供する医療的ケア児が利用可能な製品・サービス・プログラムの紹介を通じて、一人でも多くの方々に医療的ケア児を取り巻く環境に関する社会課題について知って頂くことです。第七回目となる今回は、てんかん患者さんの発作や服薬記録を管理するためのアプリ「nanacara(ナナカラ)」を中心とした事業を展開するノックオンザドア株式会社の林社長にお話を伺いました。

 

 

I-7 インタビュー(ノックオンザドア株式会社)
 

I-7 インタビュー(ノックオンザドア株式会社)
I-7 インタビュー(ノックオンザドア株式会社)

 

 

インタビュー内容

 

1.ノックオンザドア社の立ち上げ経緯

2.nanacaraができるまで

3.nanacara for Doctorについて

4.nanacara薬局の2Fにある交流スペースについて

5.メッセージ

 

インタビュー

 

1.ノックオンザドア社の立ち上げ経緯

 

鈴木:本日は貴重なお時間をありがとうございます。医療的ケア児にはてんかんを抱える子も多く、ノックオンザドア社が提供される『てんかん患者さんの発作や服薬記録を管理するためのアプリ「nanacara」』を既に利用されているご家族も多いことと思います。私も難治性てんかんの子を持つ一人の親として、「nanacara」がもっと広まり更に進化を遂げてほしい期待や思いがあり、今回林社長にインタビューのご依頼をさせて頂きました。早速ですが2018年にノックオンザドア社を立ち上げるまでの経緯を教えて頂けますか?

 

 

林さん:前職でヘルスケア事業を担当していたのですが、自分が本当にやるべきことややりたいことについて悩んだ時期がありました。背景には、前職が上場企業であったため、どうしても売上や利益を優先して困りごとがそこまで大きくはない分野のサービスを作らなければならないこともあり、本当に困っている人の笑顔が見えなくなっていたことがありました。そんな悩みを共同創業者の高山さんと相談する中で、もっと困っている人のために自分の経験や力を活かしたいと考え、踏ん切りをつけるために前職をやめてノックオンザドアを立ち上げました。

 

 

2.nanacaraについて

 

鈴木:nanacaraについて詳しくお伺いしていきたいと思います。nanacaraができるまでについて教えて頂けますでしょうか?当初プロダクトが決まっていなかった中でどのようにしてできたのでしょうか。

 

 

林さん:高山さんとも話し、困り事を持つ人々に会いに行きお話することを大事にしていこうと決め、希少疾患の患者家族に会いに行きました。小児神経を専門とする医師の先生との御縁から、てんかんを持つ方のご家族に会う機会が多かったため、共通の困りごとは何か、何が患者や家族の生活や人生の障壁になっているのかを掘り下げたところ「目の前で起きる子どもの発作の対応」が課題になっていることがわかりました。話を聞いていくと、お母さん達が正しく発作を記録できていなかったり医師にうまく伝えられていないということに苦しみや不安を強く抱いていることが伝わってきました。(自分以外)誰もわかってくれないという。一方、他の家族やかかりつけの医師も本当は詳しく知りたいと思っているもののうまく知れないと感じておりギャップがあったのです。この課題を解決すべくnanacaraの開発に取り組みました。

 

 

鈴木:サービスをよりよいものにするために多くのご家族から意見を聴取して反映させるのはネットワークもない中大変だったと思います。ご家族を訪問される以外にはどのような取り組みをされたのでしょうか?

 

 

林さん:てんかんに関する家族会や啓発イベント等に参加し、想いを伺ったり、nanacaraの説明する機会を頂いたり交流を重ねてきました。ご家族との交流の場はとても大切なので、今後も継続していきたいですし、お誘い頂ければオンライン・オフライン問わず参加したいです。おかげさまでメディア・新聞にも取り上げてもらうことができ、徐々にネットワークが広がっています。

 

 

鈴木:当事者家族としては、家族会などのオフラインイベントに参加頂けるのは親近感がわいて嬉しいですね。現在のアプリダウンロード数について教えて頂けますか?

 

 

林さん:直近のアプリダウンロード数は4万弱まで増えました。

 

I-7 インタビュー(ノックオンザドア株式会社)

 

 

3.nanacara for Doctorについて

 

鈴木:続いて医療機関向けに提供されているnanacara for Doctorについてお伺いします。医療機関向けの機能は最初から想定していたのですか?

 

 

林さん:当初は家族向けのみだったのですが、医師からのニーズもあり、20203月のリリースから半年後の10月に医療機関向け機能を追加しました。nanacaraで記録した発作情報をインターネット経由で医師と共有する医師向けのクラウド型サービスとなっています。

 

 

鈴木:医療機関への導入はハードルが高かったのではと思いますが、導入にどのような苦労があったのでしょうか。

 

 

林さん:確かに導入のハードルは高かったです。医師のネットワークもなかったので、てんかん専門医の先生方に想いを知って頂くためにご家族と一緒に手紙を書いて医療機関にお送りしたりもしました。医師に直接会って思いを伝えることを繰り返すことで徐々に導入が進んでいきました。

 

I-7 インタビュー(ノックオンザドア株式会社)

 

 

鈴木:現時点の医療機関での導入状況について教えて下さい。

 

 

林さん:てんかん専門医がいる医療機関は全国に約450箇所あり、その内6割強の約300箇所で導入されています。医師側からも積極的に連絡が来るようになってきており、広く認知されるまでになりました。てんかんの専門医でなくても、神経科や小児科でてんかん患者をしっかり診ている医師も多く、そうした病院・クリニックとの連携も進んでいます。

 

 

鈴木:アプリ導入で医師や家族にはどんなメリットがありますか?治療にどのように活かされることになりますか?

 

 

林さん:患者ご家族は発作記録を簡単にアプリ上に残すことができ、医師は診察前に前回からの経過をクラウド上で確認できます。アプリ導入により、コミュニケーションの質が向上し、家族と医師のコミュニケーションが円滑になり、薬の調整や治療方針の決定・共有が容易になります。医師側では日々の発作記録に関するグラフの閲覧とPDF出力が可能で電子カルテにも活用できます。

 

 

鈴木:データは医師とリアルタイムで共有できるのでしょうか?

 

 

林さん:ワンタイムパスワードで2時間限定閲覧とするか患者側が常時閲覧許可するかを選択可能です。

 

 

鈴木:家族がかかりつけ医療機関での導入を希望する場合、貴社側でサポートされていることがあれば教えて下さい。

 

 

林さん:nanacaraホームページのお問合せフォームからリクエスト頂ければ弊社から医療機関に導入依頼させて頂きます。

【てんかん発作記アプリ】お問い合わせ(患者ご家族様)|nanacara

 

 

4.nanacara薬局2Fの交流スペースについて

 

鈴木:貴社はてんかん患者・ご家族に寄り添う薬剤師がいる薬局「nanacara薬局」の運営にも取りくまれています(所在地は大阪市内)。nanacara薬局の2階に患者さん同士の交流スペースを設置されているとお聞きしました。どのような思いで作られたのですか?

 

 

林さん:薬局で処方箋を基に薬を出すだけでなく、患者・家族・医療者が気軽に自由に集まり声をかけあえる場所を作りたいと思っていました。2階スペースをフリースペースにして、てんかん患者や医療的ケア児の家族が交流や情報交換できる場としています。ただ、難点は古い物件でエレベーターがないため、車椅子利用者は1階で対応となっています(汗) 1階でもトイレ利用や休憩ができるよう配慮しています。

 

 

鈴木:病気や障がいを持つ子どもと家族にとって気軽にひと休みできる場所は本当に少ないのでとてもありがたい場所です。ぜひ東京にもお願いします!

 

 

林さん:ITで解決できることはほんの僅かだと思っています。リアルの場で時を共に過ごし、その中で解決できることを模索していきたいです。

 

I-7 インタビュー(ノックオンザドア株式会社)

 

5.メッセージ

 

鈴木:お話をお聞きして、本当に困っている患者と患者家族の生活に貢献したいという気持ちを強く感じました。当事者ではなかった林さんがそこまでするのはどのような価値観からでしょうか?

 

 

林さん:患者、ご家族が持たれている熱い想いやアイデアを私が関わることで世の中に実現していくことができたらという思いがあります。自己満足かもしれませんが人生の中で自分の経験や力を活かして、困っている人のためになにかできたらなと思っています。

 

 

鈴木:最後に、この記事を読まれている家族や支援者向けにぜひメッセージをお願いします。

 

 

林さん:社会課題といったら大げさですがご家族のお困りごと解決のため、皆様と一緒に活動の場を広げていきたいと考えていますのでぜひ色々な声を聴かせてほしいです。ちょっとしたことでもお気軽に問い合わせてください。よろしくお願いいたします。

 

 

鈴木:本日はありがとうございました!

 

 

 ---------------------------------------------------------------------------------

 

ノックオンザドア社およびnanacaraに関するご質問・ご意見などのお問合せについてはから受け付けております。

 

おすすめ記事