短期入所(ショートステイ)の課題 〈療育・保育〉
施設滞在中は普段とは違う環境の中、家族とも離れて過ごすことになります。
考えてみれば、子どもにとってはものすごく不安な状況。
特に、親と離れる機会の少ない医療的ケア児(医ケア児)や障害児の場合、より不安は強くなるかもしれません。
そこで必要になるのが、発達支援・成長支援など療育の分野です。
日中活動が豊富で、ショートステイに来ている仲間やスタッフとの交流や活動が盛んであれば、ショートステイが「楽しい!」「また来たい!」と思える場所になります。
そうであれば自宅とは違う環境でもリラックスして過ごすことができるでしょう。
短期入所(ショートステイ)における日中活動の現状は?
預けた先で子どもがどうやって過ごしているのか、気になりますよね。
施設利用前には見学等に行く機会があるでしょうから、大体のイメージはつけられるかと思います。
さて、預け先での日中の過ごし方(日中活動)ですが、施設によってかなり差がある部分だったりします。
一日中、保育園のように楽しく過ごせる施設もあれば、ただただ寝かされているだけ、という施設も・・・。
親としてはどうですか?
保育士も構ってくれるスタッフもいなくて、日中はただベッドに寝かされているだけ。
ケアはしてもらえるけど、本当にそれだけのショートステイ。
利用したいと思いますか?なんかイヤでしょ。
日中楽しそうなショートステイと寝ているだけのショートステイ。
選べるなら前者を選ぶ人がほとんどかと。
しかし実際には全然面白そうではないし、楽しそうでもない施設も多くありますし、そうした施設を利用せざるを得ない場合も多いでしょう。
令和2年3月に出された厚生労働省主導のアンケート結果によると、「日中活動」に対する満足度は4割弱の利⽤者が満足していないという結果でした。
日中活動の実施にあたっては、「家族の意向・意⾒を聞くことがある」とした事業所が8割を超えていとのことですが、実際の提供状況とはギャップがあると考えられます。
短期入所(ショートステイ)が楽しい場所になれないのはなぜ?
昨今、どこもかしこも人手不足。
短期入所(ショートステイ)が抱える課題も、結局のところ人手不足という問題に直面します。
施設内に療育・保育を担当するスタッフがいない、もしくは不足している。
そのような施設では、「思いっきり遊んでもらう」というのはなかなか難しいでしょう。
では、療育・保育を行う保育士やリハビリスタッフを多く配置すれば解決するのか、というと、なかなかそうもいきません。
現在の制度では、短期入所(ショートステイ)の日中活動に対しては報酬が算定されません。
そのため、保育士やリハビリスタッフの職員配置は施設要件にはなっていません。
(R6年度の診療報酬改定にて、福祉型障害児入所施設には日中活動支援加算がつくようになりました)
(また、泊まりを伴わない短期入所、医療型特定短期入所では算定が可能です)
利用者としては保育士やリハビリスタッフの配置はマストとしたいところ。
しかしながら職員配置による算定が付かない以上、施設としてはそうしたスタッフの配置は後回しにしがちです。
結果、ケアで忙しく立ち回る看護師しかいない施設では、利用中の子どもはベッドの上でぼーっとしているしかなくなるわけです。
どうやったら楽しくなるの?
単純に保育・リハビリスタッフを雇えれば簡単ですが、施設の収入に直結しないスタッフを雇うのは経営上、施設としてもなかなか難しいところです。
そこで、問題の解決方法の一つとして放課後等デイサービスや療育施設、保育施設などとの連携が挙げられます。
ショートステイを行う事業所はその他の事業も行っていることがあり、デイサービスや療育の施設を持っていることがあります。
そうした事業所ではショートステイのお部屋自体は夜泊まるために使用し、日中は他の施設で活動するという方法をとることができます。
ショートステイの事業所がその他の施設を持っていなかったとしても、地域の施設と連携すれば同様のサービス形態をとることはできます。
施設内に人員配置ができなくても、この方法であればスタッフを確保することが可能です。
こうした方法で日中活動のクオリティを高めている施設は多く存在します。
現在利用中の施設、あるいは利用を検討中の施設で、こうした連携が行われていない場合、連携が可能かどうか確認してみるとよいかもしれません。
●本記事はNPO法人Solways代表にインタビューした内容をもとに作成しております。
※NPO法人Solways
NPO法人ソルウェイズ | スペシャルニーズのある子どもたちへ
札幌市および石狩市を拠点に、医ケア児や重症心身障害者・児を支えるための事業を展開する団体。現在、重症児デイサービス、生活介護、居宅介護、訪問介護などを運営。
2022年より「北海道で暮らす医療的ケア児の未来を拓くプロジェクト(いけプロ)」をスタート。地域へのインクルーシブ拠点として小児科クリニック、病児保育、放課後等デイサービス、ショートステイ、カフェを併設する複合施設「あいのカタチ」を建設。2025年5月開業。