短期入所(ショートステイ)の課題〈地域との連携〉
療育をショートステイ単体で担うことは難しい、というお話を前回いたしました。
そしてそこで、その他施設との連携、という解決策が挙げられました。
さてそうなると、ショートステイと‘その他施設’、ひいては‘周辺地域’との関わりについても考える必要があります。
世の中の流れはインクルーシブな社会へ
令和3年に出された「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」および「学校教育法施行規則の一部を改正する省令」により、医療的ケア児のインクルーシブ教育が推進されるようになりました。
医療的ケア児とインクルーシブ教育|学び!と共生社会|まなびと|Webマガジン|日本文教出版
これにより、特別支援学校ではなく地域の学校、発達支援センターではなく近所の保育園や幼稚園へ通う障害児・医ケア児も増えてきました。
しかしながら、いきなり医ケア児を受け入れるには地域の学校や保育園では情報や経験もなく、戸惑いも多いかもしれません。
そういった時の相談拠点になるのが、その子を普段からケアしている発達支援センターやデイサービス、訪問看護ステーションなどですが、ショートステイにもその役割を期待することができます。
医療型のショートステイであればクリニックが併設されている(医師がいる)ため、学校や保育園で何かあっても主治医の意見を仰ぎやすい、というのも相談拠点とするメリットでしょう。
具体的な地域との関わり
地域との関わり方は施設によって様々かと思いますが、今回は取材にご協力いただいた‘レスパイトハウスコタン’を運営するNPO法人Solwaysの取り組みをご紹介します。
(レスパイトハウスコタンはSolwaysが運営する「あいのカタチ」という施設内にある短期入所(ショートステイ)です)
札幌市・石狩市に医療的ケア児もショートステイ可能なインクルーシブな拠点を | NPO法人ソルウェイズ
医療的ケア児に対応した医療型ショートステイ『レスパイトハウス コタン』と命名/石狩市(札幌市の隣り)に建設中 | NPO法人ソルウェイズ
レスパイトハウスコタンがあるのは石狩市という、札幌市のお隣の街です。
札幌は人口も多く、その分クリニックや病院も豊富にありますが、石狩市には札幌ほど病院はなく、小児科もわずか2軒(令和7年4月)しかありません。
そうした中で開業するショートステイ、その併設クリニック(石狩市内3軒目の小児科クリニック)には地域を支える小児科としての役割も期待されます。
Solwaysでは地域との関わりの一つとして、この併設クリニックに病児保育施設も併設しました。
クリニックに地域の保育園にとっての保健室のような役割を持たせ、必要があれば保育園へのお迎えも行います。
病児保育室「らいおん」石狩市にOPEN(2025年6月予定) | NPO法人ソルウェイズ
こうしたところから地域の保育園と施設との関係が築ければ、医ケア児が保育園を利用する際にも受け入れがスムーズになると考えられます。
また、レスパイトハウスコタンが入る「あいのカタチ」施設内には家族や地域住民の交流の場となるようなラウンジも併設されています。
こうした地域との関係を深めることで、医ケア児の社会的インクルーシブが進んでいくものと期待されます。
ゆくゆくは、健康な子が親離れするように、成長した医ケア児が親離れしても暮らしていける環境を整えることができるかもしれません。
●本記事はNPO法人Solways代表にインタビューした内容をもとに作成しております。
※NPO法人Solways
NPO法人ソルウェイズ | スペシャルニーズのある子どもたちへ
札幌市および石狩市を拠点に、医ケア児や重症心身障害者・児を支えるための事業を展開する団体。現在、重症児デイサービス、生活介護、居宅介護、訪問介護などを運営。
2022年より「北海道で暮らす医療的ケア児の未来を拓くプロジェクト(いけプロ)」をスタート。地域へのインクルーシブ拠点として小児科クリニック、病児保育、放課後等デイサービス、ショートステイ、カフェを併設する複合施設「あいのカタチ」を建設。2025年5月開業。