短期入所(ショートステイ)の課題〈利便性の確保〉
子どもは何かと手がかかるもの。
医療的ケア児(医ケア児)や障害児ならばなおさらのこと。
アラームが鳴れば飛んでいかなければいけないし、時間ごとに決まったケアがあるし、夜中にもケアがあるし。
これが毎日毎日続く。
たまには休みたい。今日はもう疲れた。明日は有給取りたい。
そんなときに短期入所(ショートステイ)がすぐに利用できれば、すごくありがたいですよね。
「ちょっとママ疲れちゃったし、明日はショートステイに遊びに行っておいで」
そんなノリで送り出せるのが理想的。
だがしかし、ショートステイの利用環境はノリで預けられるほど便利ではないのが現状です。
何日も前から予約して、その日まで体調を崩さないでいられるかとヒヤヒヤして、行くとなったら大荷物の準備をして……
預かってもらえるのは助かるものの、預けるのがそもそも大変だったりします。
利用者にとって利用しやすい環境を整えることは、短期入所(ショートステイ)にとっては大事な課題です。
では現状、どうして預けるのが大変だと感じてしまうのかを考えてみましょう。
急だけど明日預かって欲しい・・・そんなすぐには利用できない!
今日は疲れたから明日預かって欲しい。
そんなスピード感は全く期待できません。
何日も前、場合によっては何カ月も前から予約していないと使えません。
今日お願いして今日から預かってもらえるのは緊急時に限られます。
それにしたって、緊急の受け入れを行っている事業所は限られています。
しかも、緊急の受け入れをお願いする際、施設の空き状況の確認や調整は利用する家族が行っているのが現状です。
緊急で短期入所(ショートステイ)を利用しなければいけない状況ということは、家族にとっては「そんなことしてる場合じゃないんだけど!」という状況なのでしょうが、やる人がいないので自分でやるしかない、ということです。
介護が必要な高齢者であればケアマネージャーがそうした調整をしてくれるものですが、小児専門のケアマネージャーはほぼいないため、調整する役職が存在していないのです。
相談支援専門員や医療的ケア児等コーディネーターがそうした機能を担うことが期待はされますが、現状は家族がやるしかありません。
送迎がない……送り迎えは自力でするしかない
送迎を行っている事業所ももちろんありますが、実はそうした事業所は2割程度しかありません。
R2年の調査時点では9割の利用者が事業所までのアクセスを自家用車によっていたという結果でした。
しかも30分未満の所要時間でアクセスできるのは約5割。
半数は30分以上かかる場所に自家用車で送り迎えをしているという状況です。
利用者としては「送迎くらいやってくれよ」という気がしますよね。
でも事業所側としては無理な相談のようです。
なぜなら、割に合わないから。
事業所の収入は加算される障害福祉サービス等報酬で決まりますが、それらは国が決める公的価格であり、勝手に変更することはできません。
送迎加算というものはありますが、車両を維持したり運転手を雇い続けたり看護師を配置したりできるほどの算定にはならないため、割が合わず送迎を実施できないという状況がありました。
これに関してはR6年度の報酬改定にて改善が見られます。
医ケア児の送迎に関しては看護師の同乗が必要ですが、それに関して加算がついたため、以前よりは送迎に必要な体制が取りやすくなりました。
令和6年度障害福祉サービス等報酬改定(障害児支援関係)の改定事項の概要について(令和6年4月1日)
家から出るだけでも大荷物……準備が大変!
医ケア児のお出かけはなにしろ荷物が多い。
預ける時でもそれは変わりません。
短期入所(ショートステイ)に預かってもらえれば、ケアがなくなる時間があるため少しは楽になります。
でもその前後。
出かけるための準備をして、戻ってきた後は片づけもしないといけない。
そのことを考えると、預けるのが億劫になる・・・。
これは何とかしたいですよね。
医療機器を持ち歩かなければいけないのは仕方がないとして、身の回りの物品(タオル、おしりふき、Yガーゼ、経管栄養チューブetc…)を事業所の方で準備してもらえれば、かなり準備も片づけも楽になります。
でもここにも報酬の壁が・・・。
身の回りの物を準備するのに報酬がつくわけがないので、事業所で準備するとなると事業所の持ち出しになります。
かろうじて食事提供加算(低所得世帯・中間所得世帯のみに加算)というものはあるので、加算の範囲内であれば事業所でミキサー食を含む食事を提供してもらうことは可能かもしれません。
さて、この解決策として提案されるのが、最近病院等で採用されている入院セットなるものです。
タオル、おむつ、日常生活用品などを日額定額制でレンタルするというものです。
こうしたものがショートステイ事業所でも採用されれば、家族の負担を減らすことができます。
導入を検討してもらえないかどうか、というのは利用者の方から働きかける必要があるかもしれません。
●本記事はNPO法人Solways代表にインタビューした内容をもとに作成しております。
※NPO法人Solways
NPO法人ソルウェイズ | スペシャルニーズのある子どもたちへ
札幌市および石狩市を拠点に、医ケア児や重症心身障害者・児を支えるための事業を展開する団体。現在、重症児デイサービス、生活介護、居宅介護、訪問介護などを運営。
2022年より「北海道で暮らす医療的ケア児の未来を拓くプロジェクト(いけプロ)」をスタート。地域へのインクルーシブ拠点として小児科クリニック、病児保育、放課後等デイサービス、ショートステイ、カフェを併設する複合施設「あいのカタチ」を建設。2025年5月開業。