J-1 胃瘻栄養をやってみよう!やってみた!①

第1回 まずは胃瘻を作らないと始まらない

 医療的ケアが必要な子は、自分の力で食事をとれないこともまれではありません。

 

 そうした子には栄養を直接胃の中に注入する経管栄養が必要になりますが、その際まずは経鼻経管栄養から始めることが多いのではないでしょうか?

 

 でも経鼻経管栄養って管をずっと顔にテープで固定しなくちゃいけないし、毎週入れ直さないといけないし、子どもが自分で抜いちゃったりするし、正直邪魔……。

 

 これ、なんとかならないかな、と思ったところで選択肢になるのが胃瘻栄養です。

 

 

 

参考)医療的ケア|医ケアkidsナビ (spesapo-navi.jp)

 

 

胃瘻栄養 経鼻経管栄養
良いところ 悪いところ 良いところ 悪いところ

・固定テープが必要ない

・服の下に隠すことができる

ミキサー食が入れられる

自己、事故抜去しにくい

・喉の違和感が無く誤嚥リスクが下がる

手術が必要

・脇漏れ皮膚炎、肉芽形成など皮膚トラブルがある

・チューブが安価ではない(頻繁に交換しにくい)

・ボタン式だと専用のコネクタが必要(交換キットに入っているもの以外は自費購入)

手術の必要がない

・チューブが安価で交換コストが低い(汚れたら交換すればいい)

・テープ固定による皮膚トラブル

・顔に固定するので隠せない

喉に違和感がある

自己、事故抜去しやすい

 

 

 経鼻経管栄養、胃瘻栄養それぞれに良し悪しがありますが、一番大きなポイントは胃瘻を作るには手術が必要というところです。

 

 子どもによっては手術をする=麻酔をかけることが命取りになる場合もあるため、手術が必要という点で胃瘻作成を諦めざるを得ない場合もあるかと思います。

 

 ただし、胃瘻は全身麻酔ではなく鎮静下(少し寝た状態)で内視鏡を使用して作成することも可能です。理論的には小児でも可能ですが、使用する胃瘻チューブが最低7mm程度と太く、完全に寝かせた状態でなくても暴れないでいられるか、などの問題で小児には適応していない施設が多いようです。ある程度体が大きく(中学生か高校生くらい)なればチューブの太さに関しては問題なくなります。手術が心配な場合は体が大きくなるまで時期を待つという選択も可能性です。(医師によって、施設によって考え方が違うこともあります。)

 

 

 

参考)F-3 なにを食べる?(ミキサー食) | 暮らしの記事|医ケアkidsナビ (spesapo-navi.jp)

 

   F-2 なにを食べる?(栄養剤) | 暮らしの記事|医ケアkidsナビ (spesapo-navi.jp)

 

 

「で、結局どっちがいいの?」

どちらにも良いところ悪いところがあり、個別の判断が必要な場合もあるので、どちらが優れているとは一概には言えません。が、管理のことだけを考えるなら胃瘻栄養の方が断然、楽ちん

 

顔にテープ固定しなくてよくなるだけで、かなり楽。テープかぶれから解放されるし、毎週毎週嫌がられながらチューブ交換しなくてよくなるし、写真撮るときも「このチューブがなければもっと可愛く撮れるんだけどなぁ……」と残念に思うこともなくなる!

 

皮膚トラブルを起こしてしまうと「管理が楽」というメリットが相殺されてしまいますが、それさえなければ「やってよかった」と思える手術だと思います。

 

「やってよかったと思った一番のポイントは?」

 胃瘻栄養のよいところはいくつかありますが、経鼻経管栄養との大きな違いはミキサー食が入れられること!経鼻カテーテルに比べてカテーテルが太いので、ある程度粘度のあるものでも注入可能になるのです。

 

ミキサー食のよいところ ミキサー食の悪いところ

家族と同じ献立が食べられる

・好き嫌いなどの好みが見えてくる

・微量元素や電解質、食物繊維を補える

・注入時間が短縮できる

作るのが面倒

・粘度や食材によってはカテーテルが詰まる

 

 初めは試行錯誤が必要ですが、やってみれば大概のものはミキサー食にできます

 

 果物などはミキサーにかけるだけなので簡単ですね。お米、餅も普通にいける。コツはありますが、唐揚げやハンバーグ、カレーなんかも可能。見た目は残念になりますが、ケーキやクッキーなんかもいけます。柔らかめのプリンやゼリーならそのままでもOK

 

 胃の中に直接入れるのだから、入れる物は何でもよくない?そういう考え方もありましょうが、今から注入する物の匂いを嗅がせてあげる、少しだけ舌に乗せてあげる、というだけで随分と違うと思いませんか?それだけで「これ、美味しい」「これは嫌い」という好みが見えてきます。誕生日や特別なお祝いの日、「これが好きだから、今日の夕飯はこれにしてあげよう!」と家族みんなで同じ食事でお祝いができる。考えただけで生活に彩りが生まれると思いません?

 

 ただし、作るのはかなり面倒くさい。ミキサー洗うだけでも面倒。レトルトを上手く使えば多少楽はできますが、コストはかかります。そして三食全てミキサー食を作るのはかなり大変。無理せず栄養剤も併用(ミキサー食は一日一回、あとは栄養剤を使用。週末だけミキサー食、平日は栄養剤。など)していけば、大変なりに続けることはできるかと思います。

 

「困ったこともあったでしょ?」

 胃瘻にはチューブ式とボタン式があります。ボタン式の方がコンパクトで引っかかりにくいので、長期使用する胃瘻の場合ボタン式を選択することが多いかと思います。チューブ式との接続は経鼻経管栄養のときと一緒ですが、ボタン式の場合、専用のコネクタが一つ追加で必要になります

 

J-1   胃瘻栄養をやってみよう!やってみた!①

J-1   胃瘻栄養をやってみよう!やってみた!①

PEG SUPPORT net. | 胃ろうについて | 胃ろうのしくみ

 

 個人的な感想ではありますが、このコネクタが地味に厄介。病院受診中、「あ、忘れた!」となってもシリンジくらいならスタッフにお願いすればまぁまぁ手に入りますよね。でもこのコネクタは手に入りません!忘れたら最後。胃瘻と接続できず、水分さえ入れられない。しかもキットに入っているのは一本だけなので、予備で数本欲しいと思ったらそれなりのお値段で購入しなければいけない。しかも長く使っているとチューブが硬くなって接続から外れやすくなる、なんてこともありました。キットにせめて一本だけでも交換用を入れて欲しいと常々思っていました。

 

 

 

 

 

 さて、まずは胃瘻を作るところのお話をしてみました。次回は作った後のお話です。

 

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